【妊娠・出産でもらえるお金】看護師の出産手当金・出産育児一時金はいくら?出産費用の無償化はいつから?

給付金

はじめに

「産休中って、お給料はゼロになるの?」
「出産費用って結局いくらかかって、いくら戻ってくるの?」
「出産が無償化されるってニュースで見たけど、いつから?私は対象?」
「夜勤を減らしたら、もらえるお金も減っちゃう?」

妊娠がわかったら、制度の手続きと同じくらい気になるのが「お金」のことではないでしょうか。

産休・育休の仕組みについては、以前の記事「【オペ看のための育休・産休ガイド】取得タイミングと手続きを現役目線で解説 | ナースの労務ノート」でまとめました。この記事では、その続編として妊娠・出産でもらえるお金に絞って解説します。

筆者はオペ室で働く看護師で、社労士の勉強もしています。勉強していて気づいたのは、健康保険の仕組みを少し知っておくだけで「損しないための動き方」がわかる、ということです。夜勤手当がある看護師ならではのポイントもあわせて紹介します。


まず結論

お金の種類いくら?出どころポイント
出産手当金給与(標準報酬月額)の約3分の2 × 休んだ日数勤務先の健康保険産休中の生活費の代わり
出産育児一時金原則50万円健康保険出産費用にあてるお金
社会保険料の免除産休中の健康保険料・厚生年金保険料がゼロ―年金額は減らない
出産費用の無償化出産の標準的な費用について自己負担がかからない仕組みへ健康保険(予定)2026年に法律が成立。開始時期は未定

出産手当金:産休中の「お給料の代わり」

いくらもらえるの?

出産手当金は、産休中に給与が出ない期間の生活を支えるお金です。勤務先の健康保険(協会けんぽや健康保険組合)から支給されます。

1日あたりの金額

支給開始日以前12か月間の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 3分の2

「標準報酬月額」は、社会保険料を計算するときに使う「月給の目安」です。基本給だけでなく、夜勤手当や残業手当などの各種手当も含めた金額で決まります。

計算してみると

標準報酬月額が30万円の人が、予定日ちょうどに出産した場合です。

項目計算
1日あたり30万円 ÷ 30 × 3分の2 = 6,667円
支給日数産前42日 + 産後56日 = 98日
合計6,667円 × 98日 = 約65万円

※実際の金額は、加入している健康保険の端数処理などで少し変わります。

支給される期間

  • 出産日以前42日(多胎妊娠は98日)から、出産の翌日以後56日までのうち、仕事を休んだ日
  • 出産が予定日より遅れた場合、遅れた日数分も支給されます
  • 産休中に給与が一部出ている場合は、出産手当金との差額が支給されます

夜勤が多い看護師は、どうなる?

社労士の勉強をしていて「なるほど」と思ったのがここです。

  • 夜勤手当なども標準報酬月額の算定対象となるため、結果として出産手当金の額に反映されることがあります
  • 妊娠中に夜勤を減らしても、すぐには大きく下がりません。 出産手当金は直近12か月の平均で計算されるためです。
  • また、夜勤手当のように月によって変わる手当が減っただけでは、標準報酬月額はふつう年の途中で見直されません。(固定の給料が変わったときの「随時改定」の対象にならないため)

つまり、「お金が減るのが心配で夜勤免除を言い出せない」という心配は、出産手当金に関してはそこまで大きくありません。 体調を優先して大丈夫です。

※ただし、育休中にもらう育児休業給付金は、休業に入る前の6か月の賃金をもとに計算されます。こちらは妊娠中の夜勤回数の影響を受けることがあります。

退職する場合の注意点

産休中や産休前に退職する場合も、次の条件を満たせば、退職後も出産手当金を受け取れます。

  • 退職日までに、健康保険の被保険者期間が続けて1年以上ある
  • 退職日に出産手当金を受けているか、受けられる状態にある

退職日に出勤すると受け取れなくなります。 「最終日だけ挨拶に行こう」と出勤扱いにしてしまうと対象外になるので、気をつけてください。


ちなみに、出産手当金を受け取れるのは、原則として勤務先の健康保険や共済組合に「被保険者本人」として加入している人です。

パートで夫(妻)の健康保険の扶養に入っている人は対象になりません。また、国民健康保険に加入している人も原則として対象外です。※出産育児一時金は別の制度なので、扶養に入っている人や国民健康保険の人も対象になります。

パートの契約時間と扶養・社会保険の関係については、時給別に計算したこちらの記事で詳しくまとめています。

看護師パートは「週20時間未満なら扶養のまま」って本当?時給別に計算してみた | ナースの労務ノート

出産育児一時金:出産費用にあてる50万円

いくらもらえるの?

健康保険から、子ども1人につき原則50万円が支給されます。(2023年4月から)

  • 産科医療補償制度に加入していない医療機関で出産した場合や、妊娠22週未満の出産の場合は48.8万円です。
  • 双子なら2人分が支給されます。
  • 配偶者の健康保険の扶養に入っている場合も、「家族出産育児一時金」として同じ額が支給されます。

窓口で50万円を立て替えなくていい

多くの医療機関では「直接支払制度」が使えます。健康保険から病院へ直接支払われるので、窓口では50万円を超えた分だけを払えば済みます。出産費用が50万円より少なければ、差額はあとで受け取れます。

帝王切開の場合は?

オペ室にいると、帝王切開に入ることもありますよね。

帝王切開は医療行為なので、健康保険が使えます(3割負担)。それに加えて次のものも使えます。

  • 出産育児一時金(50万円)も通常どおり出る
  • 医療費が高額になったら、高額療養費制度で自己負担に上限がある
  • 民間の医療保険に入っていれば、手術給付金の対象になることが多い

「帝王切開のほうがお金がかかる」と思われがちです。でも、制度をきちんと使えば、自己負担は思ったより抑えられることが多いです。


産休中は社会保険料が免除される

産休中は、健康保険料と厚生年金保険料が、本人負担分も病院負担分も免除されます。(2014年4月から)

  • 免除期間:産休を始めた月から、産休が終わった日の翌日が属する月の前月まで
  • 手続き:勤務先が年金事務所に届け出る(本人が勤務先に産前産後休業を申し出て、事業主が年金事務所等へ届出を行います)
  • 将来の年金:免除された期間も、保険料を納めたものとして扱われるので、年金額は減りません

見落としがちな「住民税」

住民税は社会保険料と違い、産休中も免除されません。前の年の所得にかかる税金なので、産休中も支払いが続きます。給与から天引きできない期間は、自分で納めることになることもあります。産休に入る前に、総務に払い方を確認しておきましょう。


復帰後に知っておきたい、社労士目線の2つの制度

ここからは社労士の勉強で出てきた、あまり知られていない制度です。

制度どんなもの?こんな人におすすめ
育児休業等終了時改定(育休を取らずに復帰する場合は、産前産後休業終了時改定)復帰後3か月の給与が以前より下がった場合、一定要件を満たせば4か月目から標準報酬月額を改定できる夜勤なし・時短で復帰して手取りが減った人
養育期間の標準報酬月額の特例3歳未満の子を育てていて給与が下がっても、将来の年金は下がる前の給与で計算される時短勤務・夜勤免除で給与が下がる人(父親も対象)

どちらも本人の申出(職場経由での届出)が必要です。知らないと使えない制度なので、復帰するときに総務へ「この2つの手続きをお願いします」と伝えるだけで違います。

特に看護師は、夜勤なしで復帰すると給与がガクッと下がりやすい職種です。この2つは、ぜひ覚えておいてください。


出産費用の無償化はいつから?

2026年に法律が成立した

2026年5月29日、出産費用を実質無償化するための改正健康保険法が成立しました。(6月5日公布)

厚生労働省は、出産費用の見える化を進めるとともに、出産の標準的な費用について自己負担がかからない仕組みを導入するとしています。

また、2026年9月時点では、新しい仕組みの具体的な開始時期や詳細について、今後決められる部分があります。

そのため、これから出産する人は「もう出産費用が無料になる」と考えるのではなく、出産予定時期に厚生労働省や加入している健康保険の最新情報を確認するのがおすすめです。

報道や専門家の解説によると、主な内容は次のとおりです。

項目内容
無料になるもの正常分娩の標準的な費用。健康保険から医療機関に直接支払われ、窓口での支払いがなくなる
自己負担が残るもの無痛分娩の追加費用、個室代、お祝い膳などのサービス
現金の給付出産費用とは別に、妊婦に一定額の現金が給付される予定(金額は今後決まる)
経過措置当分の間は、今の出産育児一時金の仕組みを続ける医療機関もある

始まるのはいつ?

2026年9月時点では、まだ決まっていません。 施行日は「公布から2年以内に政令で定める日」とされています。遅くとも2028年6月までには始まる予定です。

社労士を勉強している立場から見た「これから」

制度の変化を追いかけていると、国は「出産・子育てのお金の負担を減らす」方向に、かなりのスピードで動いています。

  • 2025年4月:出生後休業支援給付金(一定の要件を満たして出生直後に育休を取得した場合、最大28日間、既存の育児休業給付と合わせて手取り10割相当)、育児時短就業給付(2歳未満の子のための時短勤務中に給付)がスタート
  • 2026年4月:その財源として、健康保険料に上乗せする「子ども・子育て支援金」の徴収がスタート
  • 2028年6月まで:出産費用の無償化がスタート予定

私たちは、健康保険料で「支える側」でもあり、出産・育児で「使う側」でもあります。制度はこれからも変わっていくので、「今の自分に使える制度はどれか」を、出産のタイミングで確認することが大切です。

一方で、出産手当金は今回の無償化とは別の制度です。産休中の生活を支えるお金としての役割は、これからも変わらないと考えられます。


オペ室のお金あるある

あるある①「夜勤手当、なくなったら生活どうしよう」

夜勤明けで給与明細を見て、「この夜勤手当が産休中はなくなるのか…」と不安になる

あるある②「患者さんには説明できるのに…」

「帝王切開は保険が使える」と頭ではわかっているのに、自分の出産のお金となると急にわからなくなる

あるある③「え、休んでるのに住民税?」

産休に入ってから住民税の納付書が届いて驚く

あるある④「夜勤ないのに、なんで保険料同じ?」

復帰後、夜勤がなくなった給与明細を見て、社会保険料だけが前のままなことに気づく


最後のひとつは、「育児休業等終了時改定」を知っていれば防げます。


まとめ

項目ポイント手続き
出産手当金標準報酬月額の約3分の2 × 休んだ日数。夜勤手当も計算に含まれる職場経由で健康保険に申請
出産育児一時金原則50万円。直接支払制度なら窓口で立て替え不要医療機関で直接支払制度に合意
社会保険料の免除産休中は健康保険料・厚生年金保険料がゼロ。年金額は減らない職場が年金事務所に届出
住民税産休中も免除されない払い方を総務に確認
復帰後の制度育児休業等終了時改定(または産前産後休業終了時改定)・養育期間の特例本人の申出が必要
出産費用の無償化2026年に法律が成立。開始は2028年6月までの予定(時期は未定)最新情報を確認

お金の不安は、「知らない」ことから来ることが多いです。使える制度を知っておけば、安心して産休に入れます。


※この記事は、2026年9月時点の法令・公表情報をもとに、一般的な情報をまとめたものです。支給額や手続きは、加入している健康保険や勤務先によって異なる場合があります。具体的な金額や手続きは、勤務先の総務・人事、加入している健康保険、または社会保険労務士にご確認ください。出産費用の無償化については、今後の政令や厚生労働省の発表で内容が変わる可能性があります。

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