はじめに
「産休・育休中は給料から厚生年金が引かれてないけど、将来の年金は減るの?」
「復帰後は夜勤なしの時短。給料が下がったら年金も減るのでは……」
「手続きは病院が全部やってくれると思っていた」
妊娠・出産を控えたオペ看や、育休から復帰したばかりの方なら、一度は気になったことがあるのではないでしょうか。
結論から言うと、産休・育休中の年金は基本的に減りません。ただし復帰後については、自分から申し出ないと損をする手続きがあります。
この記事では、産休・育休中と復帰後の年金の仕組みを、オペ看の働き方に合わせて解説します。
まず結論:休業中は減らない、復帰後は「申出」がカギ
| 時期 | 年金はどうなる? | 必要な対応 |
|---|---|---|
| 産休中 | 保険料免除・年金は減らない | 病院が届出(本人は申出のみ) |
| 育休中 | 保険料免除・年金は減らない | 病院が届出(本人は申出のみ) |
| 復帰後(給料が下がった) | 何もしないと将来の年金が減る | 養育特例の申出が必要 |
| 復帰後(保険料が高いまま) | 保険料の負担が重いまま | 育休終了時の月額変更を申出 |
産休・育休中は保険料が免除される
一言で言うと…
「休んでいる間の健康保険・厚生年金の保険料は、本人負担も病院負担もゼロ」
産休中も育休中も、健康保険料と厚生年金保険料が免除されます。給与明細から社会保険料が引かれていないのはこのためです。
免除されても年金は減らないの?
減りません。ここが一番大事なポイントです。
免除された期間は、保険料を納めたものとして扱われます。休業前の標準報酬月額(保険料計算のもとになる金額)で払い続けたのと同じ扱いになるため、将来の年金額には影響しません。
| 項目 | 産休・育休中の免除 |
|---|---|
| 免除される保険料 | 健康保険料・厚生年金保険料 |
| 免除の対象 | 本人負担分・病院負担分の両方 |
| 将来の年金 | 減らない(納付済みと同じ扱い) |
| 医療機関の受診 | 通常どおりできる(マイナ保険証・資格確認書) |
| 住民税 | 免除されない(前年の所得で課税されるため) |
「保険料を払っていないのに年金は減らない」という、かなり手厚い制度です。
短い育休でも免除される?
2022年10月の改正で、短期間の育休でも免除されやすくなりました。
毎月の保険料
| ケース | 免除される? |
|---|---|
| 月末時点で育休中 | その月は免除 |
| 月末に育休中でなくても、同じ月の中で14日以上の育休 | その月は免除 |
賞与(ボーナス)の保険料
| ケース | 免除される? |
|---|---|
| 賞与月の末日を含み、連続1か月を超える育休 | 免除 |
| 上記以外(育休が1か月以下など) | 免除されない |
パートナーが短期間の育休を取る場合にも関係するので、夫婦で確認しておくと安心です。
復帰後に年金が減る?「給料ダウン」の落とし穴
なぜ復帰後に年金が減るの?
厚生年金の金額は、働いていた期間の標準報酬月額をもとに計算されます。つまり、給料が下がった期間が長いほど、将来の年金も少なくなる仕組みです。
オペ看の場合、復帰後は次のような理由で給料が下がりやすくなります。
| 給料が下がる理由 | オペ看の場合の例 |
|---|---|
| 時短勤務 | 基本給が勤務時間に応じて減る |
| 夜勤免除 | 夜勤手当がなくなる |
| オンコール免除 | オンコール手当・呼び出し時の残業代がなくなる |
| 残業の制限 | 時間外手当が減る |
時短にしていなくても、夜勤とオンコールがなくなるだけで手取りがガクッと減る人は少なくありません。
※夜勤免除の制度については【看護師の夜勤免除申請】妊娠中・育児中に使える制度まとめ | ナースの労務ノートの記事で詳しく解説しています。
年金を守る制度:養育期間標準報酬月額特例
一言で言うと…
「保険料は下がった給料で払いながら、将来の年金は育休前の給料で計算してもらえる制度」
正式名称は長いですが、「養育特例」と呼ばれることが多いです。
どんな制度?
3歳未満の子どもを育てている間に標準報酬月額が下がっても、子どもを育て始める前の高い標準報酬月額で年金を計算してもらえます。
保険料は下がった金額のまま、年金だけは高いほうで計算される。デメリットがなく、使わない理由がない制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 3歳未満の子を養育している厚生年金の加入者 |
| 条件 | 標準報酬月額が、養育開始月の前月より下がっていること |
| 対象期間 | 養育開始月から、子どもの3歳の誕生日がある月の前月まで |
| 保険料 | 下がった標準報酬月額で計算(安いまま) |
| 将来の年金 | 養育前の標準報酬月額で計算(高いまま) |
| 男性も使える? | 使える(パパも対象) |
どのくらい差が出るの?
目安として、標準報酬月額が30万円から22万円に下がった状態が2年間続いたケースで考えてみます。
| 項目 | 特例なし | 特例あり |
|---|---|---|
| 年金計算に使う標準報酬月額 | 22万円 | 30万円 |
| 将来の年金への影響(概算) | 年約1万円少なくなる | 減らない |
年1万円と聞くと小さく感じるかもしれません。でも年金は一生受け取るものなので、受給期間が20年なら約20万円の差になります。しかも保険料の負担は増えません。
※金額は老齢厚生年金の報酬比例部分をもとにした単純な概算です。実際の金額は加入歴などによって変わります。
申請方法
| STEP | 内容 |
|---|---|
| STEP1 | 復帰後、給与明細で標準報酬月額が下がったか確認する |
| STEP2 | 病院の人事・総務に「養育期間標準報酬月額特例を申し出たい」と伝える |
| STEP3 | 「養育期間標準報酬月額特例申出書」を記入する |
| STEP4 | 病院経由で年金事務所に提出してもらう |
添付書類は、原則として①戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書(親子関係の確認)と、②住民票の写し(同居の確認)です。
ただし2025年1月からは、申出書に本人と子どもの両方のマイナンバーを記入すれば、戸籍・住民票の添付は原則不要になりました(日本の戸籍がある場合。確認のため処理に時間がかかることがあります)。
申請を忘れていたら?
さかのぼって申請できますが、申出日の前月までの2年間分までです。それより前の期間は特例を受けられなくなるため、気づいたら早めに申し出ましょう。
注意:妊娠中から夜勤免除をしていた人
特例の基準は「子どもが生まれた月の前月」の標準報酬月額です。妊娠中から夜勤免除を受けていて、出産前にすでに標準報酬月額が下がっていた場合は、その下がった金額が基準になります。
出産前に下がった分までは取り戻せないので、「どの時点の金額が基準になるか」を人事・総務に確認しておくと安心です。
年金とは別に:保険料を下げる「育休終了時の月額変更」
一言で言うと…
「復帰後の給料に合わせて、社会保険料を早めに下げてもらう手続き」
どんな制度?
標準報酬月額は、通常は年に1回見直されます。そのため、復帰後に給料が下がっても、しばらくは育休前の高い保険料が引かれ続けることがあります。
育休終了時の月額変更(正式には「育児休業等終了時報酬月額変更届」)を使うと、復帰後3か月の給料をもとに標準報酬月額を下げてもらえます。
| 項目 | 通常の月額変更 | 育休終了時の月額変更 |
|---|---|---|
| きっかけ | 基本給など固定的賃金の変動が必要 | 固定的賃金の変動は不要 |
| 等級の差 | 2等級以上の変動が必要 | 1等級の差でもOK |
| 計算のもと | 変動後3か月の給料 | 復帰後3か月の給料 |
| 手続きのきっかけ | 病院が判断 | 本人の申出が必要 |
産休から直接復帰する場合も、同じ仕組みの「産前産後休業終了時報酬月額変更届」があります。
養育特例とセットで使うのが基本
月額変更だけをすると、保険料は下がりますが、将来の年金も下がってしまいます。
| 使った手続き | 保険料 | 将来の年金 |
|---|---|---|
| 何もしない | 高いまま(しばらく) | 下がった給料で計算される時期が来る |
| 月額変更のみ | 下がる | 下がる |
| 養育特例のみ | 高いまま(しばらく) | 守られる |
| 月額変更+養育特例 | 下がる | 守られる |
「保険料は下げて、年金は守る」。この2つはセットで申し出るのが基本です。
現場あるある
あるある①「病院が全部やってくれていると思っていた」
産休・育休中の保険料免除は、病院が手続きしてくれることがほとんどです。そのため「復帰後も自動で何とかなる」と思いがちです。でも養育特例と月額変更は、本人が申し出ないと始まりません。
あるある②「時短にしてないのに給料が激減した」
フルタイムで復帰しても、夜勤免除とオンコール免除で手当がなくなり、総支給額が大きく減ることがあります。時短でなくても標準報酬月額が下がれば、養育特例の対象になります。
あるある③「保育園の呼び出しで休みが多く、3か月の平均が出るか不安」
育休終了時の月額変更は、給料の計算基礎となる日数が17日未満の月を除いて平均を出します。子どもの体調不良で休みが多い月があっても、残りの月で計算してもらえる場合があります。
※子どもの急な体調不良には【子の看護等休暇】子どもの急な体調不良に使える制度~オペ看が解説~ | ナースの労務ノートも使えます。
あるある④「2人目のときに、また申請が必要だと知らなかった」
養育特例は子どもごとに申し出る必要があります。第1子の特例は、第2子の産休・育休が始まった時点で終わります。第2子が生まれたら、改めて申出書を出しましょう。
あるある⑤「夫も使えるとは思わなかった」
養育特例は性別に関係なく使えます。パートナーが育休や時短で給料が下がった場合も対象になるので、夫婦で確認しておくと安心です。
注意点:標準報酬月額が下がると手当も下がる
標準報酬月額が下がると、保険料だけでなく、傷病手当金や出産手当金の金額も下がります。どちらも標準報酬月額をもとに計算されるためです。養育特例は年金だけの制度なので、これらの手当は守られません。
月額変更をしなくても、年1回の見直しでいずれ標準報酬月額は下がります。月額変更は、その時期を早める手続きです。
2人目の妊娠を考えている場合は、次の出産手当金への影響も含めて、人事・総務に相談してから判断するのがおすすめです。
※出産手当金の計算方法は【妊娠・出産でもらえるお金】看護師の出産手当金・出産育児一時金はいくら?出産費用の無償化はいつから? | ナースの労務ノートの記事で解説しています。
まとめ
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 産休・育休中の保険料 | 本人負担も病院負担も免除 |
| 産休・育休中の年金 | 納付済みと同じ扱いで減らない |
| 復帰後に給料が下がったら | 養育特例で年金を守れる(本人の申出が必要) |
| 保険料を早く下げたいなら | 育休終了時の月額変更(1等級差でもOK) |
| 基本の使い方 | 月額変更+養育特例のセット |
| 申請を忘れていたら | 養育特例は2年前までさかのぼれる |
| 注意点 | 月額変更をすると傷病手当金・出産手当金も下がる |
産休・育休中の年金は、制度がしっかり守ってくれます。気をつけたいのは、復帰後の「申し出ないと使えない」手続きです。
復帰して落ち着いたタイミングで、一度給与明細を見て、人事・総務に確認してみてください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスではありません。具体的な状況については、職場の人事・総務、または社会保険労務士・年金事務所にご相談ください。


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