【残業月90時間近くの施工管理から看護師へ】病院を建てていた私が、働き方の「普通」を疑うまで

キャリア

※この記事は、筆者の体験と2026年10月時点の法令をもとに書いています。

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朝5時の搬入、土曜も現場

看護師になる前、私は新卒で建設会社に入り、施工管理の仕事をしていました。

資材の搬入がある日は、朝5時に現場に入ります。日中は職人さんとの段取りや現場の確認、夕方からは書類や写真の整理。土曜日も普通に現場がありました。残業は、多い月で90時間近くになっていました。

明るいうちに家に帰れたのは、配属されて最初の数週間だけです。それ以降は、暗くなる前に帰った記憶がほとんどありません。

それでも当時の私は、この働き方を「おかしい」とは思っていませんでした。新卒で入った会社で、周りの先輩も同じように働いていたからです。比べる相手がいないと、今いる場所の働き方が「普通」になります。

病院の現場で、昔の夢を思い出した

施工管理として最後に担当したのは、ある大学病院の増築工事でした。

現場の階段や通路で、白衣を着た医師や看護師とすれ違うことがよくありました。そのたびに、「そういえば昔、医療の仕事に憧れていたんだ」と思い出していました。

建物をつくる仕事にもやりがいはありました。それでも、病院の中で働く人たちの姿は、ずっと頭に残っていました。ただ、そのときはすぐに転職しようとは思いませんでした。今さら無理だと思っていたからです。

スーパーで、同僚が看護師を目指すと言った

施工管理を辞めたあと、スーパーで売り場づくりと品出しの仕事をしていました。棚卸しや、どの商品がどれくらい売れるかの見立ても担当していました。ちょうどコロナの時期で、マスクやティッシュが飛ぶように売れ、品出しが追いつかない日が続きました。

そこで仲の良かった同僚が、ある日「看護師になる」と言って仕事を辞めました。自分とほとんど年の変わらない、少しだけ年上の人です。「今さら無理」と思っていた私にとって、「この年からでも目指していいんだ」と気づかされる出来事でした。

その話をきっかけに、私も看護師について調べ始めました。調べるうちに、社会人から看護師を目指す道があることを知り、大学病院の現場で思い出した「医療の仕事がしたい」という気持ちが、もう一度よみがえりました。

それが、私が看護師を目指したきっかけです。

その後、スーパーの社員を辞めて受験勉強をし、社会人から3年制の看護専門学校に入学しました。学費をどうしたのか、あとから知った給付金のことは、こちらの記事に書いています。

振り返ると、月90時間は「普通」ではなかった

看護師になり、社労士の勉強を始めてから、施工管理のころの働き方を数字で見直してみました。

まず、月80時間という数字には特別な意味があります。

脳や心臓の病気が仕事によるものかどうかを判断する労災の認定基準では、次のような残業があると、仕事との関連が強いと評価されます。

残業時間評価
発症前1か月に約100時間業務との関連性が強い
発症前2〜6か月の平均で月約80時間業務との関連性が強い

いわゆる「過労死ライン」です。ただし、この時間を超えたら必ず労災認定される、という意味ではありません。逆に、基準に届かなくても、勤務間インターバルの短さなど、労働時間以外の負荷要因を含めて判断されることがあります。

当時の私は、残業が80時間を超えた月が2回ありました。平均で見ると基準には届きませんが、この水準に近い働き方をしていたことになります。

今になってこの数字を見ると、よく何も疑わずに働いていたなと思います。

当時、残業の上限は「目安」しかなかった

もう一つ知ったことがあります。私が施工管理をしていたころは、どの業種にも、法律で決まった残業時間の上限がありませんでした。

当時あったのは、国が示した「月45時間・年360時間」という目安(大臣告示)だけです。守らなくても罰則はなく、36協定に特別条項を入れれば、これを超えて残業させることもできました。

さらに建設業は、この目安の対象からも外されていました。

その後、2019年4月(中小企業は2020年4月)から、働き方改革で罰則付きの上限ができました。

区分上限
原則月45時間・年360時間
特別な事情がある場合年720時間以内、月100時間未満(休日労働を含む)、2〜6か月平均80時間以内(休日労働を含む)。月45時間を超えられるのは年6回まで

ただし建設業は、この上限の適用も2024年3月まで猶予されました。2024年4月からは建設業にも原則として上限規制が適用されていますが、災害の復旧・復興の事業には一部例外があります。

もちろん当時も、残業させるには36協定が必要で、残業代を払う義務もありました。それでも、「何時間まで」という歯止めは、建設業には実質的に何もなかったのです。

当時の私は、36協定という言葉すら知りませんでした。

残業時間の多さを疑う以前に、自分を守るための法律があることすら知らなかったのです。

看護師は、最初から上限の対象だった

では、今の自分の職種はどうなのか。調べてみると、建設業との違いがはっきりしました。

建設業が2024年まで待たされたのに対し、看護師は2019年(中小規模の病院は2020年)の改正当初から、残業の上限規制の対象です。

一方、医業に従事する医師については2024年3月まで適用が猶予され、現在も特別な上限規制が設けられています。

病院で働く看護師も、残業できる時間には法律上の上限があり、上限を超えて働かせることは違法です。そもそも残業をさせるには、病院が36協定を結んで届け出ている必要があります。

くわしくは、こちらの記事でまとめています。

看護師になって、楽になったこと・きついこと

今は手術室で働いています。病棟のことはわかりませんが、手術室は予定の手術が終われば帰れる日が多く、施工管理のころと比べて帰宅時間はそこまで遅くなりません。土曜日に現場へ行くこともなくなりました。

一方で、私にとって一番きついのはオンコールです。夜中や休日にいつ電話が鳴るかわからない状態は、正直、自分には合っていないと感じています。

施工管理のころは残業時間の長さが負担でしたが、看護師になった今は、仕事と私生活を切り離しにくいことが負担になっています。

職種が変われば、働き方の悩みも変わるのだと思います。

オンコールの待機時間が労働時間になるのか、手当はどうなっているのかは、こちらの記事で解説しています。

同じ看護師でも、オンコールの有無や頻度は職場によってかなり違います。クリニックや健診センターなど、オンコールがない、または少ない働き方もあります。

今すぐ転職するつもりがなくても、ほかの職場がどんな条件で働いているのかを知っておくと、今の職場の「普通」を比べる材料になります。看護師の転職サイトは無料で登録でき、登録したからといって転職しなければならないわけではありません。

求人の条件を一度のぞいてみたい方は、こちらから見られます。

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「普通」を疑うために、まず数字を見る

新卒のころの私は、残業時間の数字を見ても、それが多いのかどうかを考えたことがありませんでした。基準を知っていれば、もっと早く「これは普通じゃない」と気づけたかもしれません。

看護師の働き方にも、「手術室はこういうもの」「看護師だから仕方ない」という空気があります。だからこそ、まず次の3つを確認してみてください。

  1. 自分の月の残業時間(給与明細の時間外の欄)
  2. 病院の36協定の上限(職場の掲示や総務で確認できます)
  3. 残業代が正しく計算されているか

全部を一度に理解する必要はありません。

まず、自分が何時間働いているのかを知る。それだけでも、働き方を見る目は変わると思います。

おわりに:建てる側から、中で働く側へ

かつては工事で出入りしていた病院という場所で、今は中で働く側にいます。

建てる側にいたころは、自分の働き方を疑うことすらできませんでした。中で働く側になった今、同じことをくり返さないために、働き方のルールを学んでいます。社労士の勉強を始めたのも、このブログを書いているのも、そのためです。

「普通」かどうかは、比べる相手と数字があれば判断できます。この記事が、自分の働き方を一度立ち止まって見直すきっかけになればうれしいです。

参考資料

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